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- 作者: 岡部伊都子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/08
- メディア: 文庫
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- 作者: 岡部伊都子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1983/12
- メディア: 文庫
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もともと女性の書いたエッセイが好きで、だから女性の書いたブログも大好きなんだけれども、このジャンル、ものすごく感じの悪いものがある。プロの文筆家によるものであっても。
私が感じが悪いと思う基準は、おそらく、その人の姿勢に甘えたところがあるかないかで、具体的には、何か悪いことがあったときに自分の責任として考えるか、諸行無常致し方ないこととしてただ淡々と描いてるか、どちらかのスタンスであれば気持ち良い文章としてするっと入って来る。誰か悪者を作った時点でもうダメだ。悪者というか敵を作ると耳目を集めやすいけども、そういうのはどうにも美しくないと思う。
岡部伊都子さんの文章は、子どものころ読んだ時には「親戚のきびしいおばさん」って感じで、怖いと思った。今読むと、むしろ若い女性特有の繊細さや、美に対するあくなき憧れのほうを強く感じる。何より文章にキレと流れがあって、これこそエッセイっていうエレガントさがある。そして、まったく甘えがない。だから怖かったんだと思う。
「観光バスの行かない…」で、ちょうど安保条約が締結された時の回があるのだけれども、淡々と事実を述べ、決して何かを具体的に糾弾していないのに、彼女の抱いた怒りや懸念が鮮やかに伝わる。その後きわめてなめらかに本題の寺や仏像の話に移行する筆の冴え。
政治が何かと騒がしいこのごろだけれども、このように美しく自分の思いを伝える術を私はもたないので、黙るばっかりでふがいない感じ。
★★★
食べ物を食べたときに女の人が「うまい」っていうとドキリとする。そのたびに「関東ではそれが普通」って思い返すんだけど、その瞬間のざらりとした感覚自体は消すことができない。美しい美しくないというのはそういうことだと思う。
でも、他に私が無意識に発している言葉や言動に対して、ざらつきを感じる人もいるんだろうなと思うと、鋭い美意識は怖い。