「粋」というフレームワーク
- 作者: 九鬼周造
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/09/17
- メディア: 文庫
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「粋(イキ)の基本的意味は異性関係にあり、それは媚態と意気地と諦めという三つの契機からなっている。」とあるのだけれど、これまで、正直、これを備えた「粋な」状態というのがイメージできなかった。
でも、逆に異性との関係がうまくいかなくてこじれるとき、かならず、このどれかが欠けているということに、昨夜ふと気づいた。
わかりやすく俗な感じで言うと、媚態=「アピールや駆け引きにより相手の興味を引き続ける魅力」であり、意気地=「相手に依存せず、自分ひとりでも自分の人生を楽しめるという自立」であり、諦め=「相手に執着せず、いつでも別の人に行けるという軽み」である。
しかし「いちいちアピールしなくても私のすべてをわかってほしい」って思うのが恋愛であり、「相手がいないと生きていけない、何をやっても楽しくない」って思うのが恋愛であり、「他の誰かじゃダメ」って思うのが恋愛なんだけど、そこがそもそも野暮なんだ。
粋と野暮ってのは「善と悪」ではないし「幸と不幸」でもない軸だけど、異性との関係で、本当に恋に落ちてしまうと、損なわれる何かがあるというのは、割りと体感でわかる。
まあ、そんなことがわかったからといってどうなるものではないけど、ただ、しんどい恋愛を回収するのに「粋」というフレームワークを使うのは、特に意味のない人生を美しくするのには、なかなか良いアイデアではないかと思った。