予定地

いずれなにか書きます

確か、その日は渋谷にいて、線の細い男の子がノートPCに入れて持ってきた小沢健二の動画-彼がやたらテレビに露出してたときの"レアな"動画のオリジナル詰め合わせ-を見たり、おかっぱにめがねの三十代女子(古着のスカートとベレー帽着用)が語る「私とフリッパーズ、あるいはあのころの渋谷」みたいな話を聞いてて、正直死ぬほど退屈で、もばついに気を取られていた。

ちょうどタイムラインでは、名前だけ知ってる人や一度だけ会ったことがある人とかが、なんとなく下北沢で集まろうという話になってて、面白そうだから自分も合流することにして、あいさつもそこそこにカフェを出て井の頭線に乗り込んだ。最終的にその日は朝まで飲んだ。誰もあんまり覚えていないけれども、その場にいた男女全員とキスしたようなそんな夜だった。それが最初だった。
思えば、あの退屈な午後に井の頭線に飛び乗ったところから、すべてがはじまったのだと思う。ビリヤードの最初のショットのように、あの魔法の夜がすべてを動かしていった。
それ以来、通りかかったバスにはいつでも飛び乗るつもりでいる。人との間のどうしようもない壁、あるいは薄い膜、そういうものを突き破るような最初の一突きを待ち望んでいる。インターネットであっても、インターネットでなくてもいい。